オーストラリアの移民制度・移住制度・移民政策

オーストラリア移民制度の歴史概要

現在のオーストラリア移民制度の原型がスタートしたのは1950年代。太平洋戦争中、オーストラリアの人口は600万人程度だったのですが、日本軍にダーウィンを空襲されたり、シドニーを特殊潜航艇で襲撃されたり、バス海峡で日本の潜水艦にせっせと船を沈められたり、インド洋沿岸ではドイツ潜水艦に船が沈められたり、ドイツの仮装巡洋艦にWA沖合いで正規巡洋艦シドニーが撃沈(生存者ゼロ)されるわと、国土防衛問題が議論される様になりました。「たった、これだけの人口で、この広い国土が防衛できるのか?」と。なんといっても、インドネシアやニューギニアと言った、玄関口まで日本軍が迫ってきたことは、かなり大きな脅威だったようです。本国(当時)イギリスは遠すぎて当てにもならず・・・

戦後、太平洋戦争に起因する防衛問題意識から、人口を増やすために、白豪主義に基づいてイギリスやアイルランドからの移民を促すも、ヨーロッパも戦後の復興期で、移民を志す人数はさほどいない。そこで「できればアングロサクソンに来て欲しいけど、仕方がない。地中海系で我慢しよう」と、イタリアやギリシャ、スペインに声をかけたところ、イタリアは戦後の不景気で経済はどん底、ギリシャは内戦が勃発、スペインはフランコ将軍独裁政権を嫌って逃げ出す人多数、と言う事情が重なり大量の移民が地中海から、このオーストラリアに渡ってきたのが、いわば戦後オーストラリア移民制度の始まりです。

現在メルボルンには45万人のギリシャ系と35万人のイタリア系、そして20万人のスペイン系が住んでいるのですが、これが全てこの時期に移住してきた人たちと子孫。そして意外に多いのがハンガリー系ですが、これは1950年代のハンガリー動乱に発生した難民の子弟達。東欧系の移住者は、規模で言うと地中海系の五分の一程度ですが、戦後のソビエト支配を嫌って、多くの移民がオーストラリアに渡ってきたというわけです。

1960年代から1970年代にはベトナム戦争とその終結に伴い、共産党政権を嫌った大量の難民がオーストラリアへ移住してきました。時を同じく、多くの中国系移民が、主に東南アジアから移住してきたのですが・・・もう、この頃には白豪主義もなし崩しに弱まっていった様です。1980年代の中ごろには、ほぼ公的な人種差別は払拭されたとか・・・「人種問題は全く無い」とは言えませんが、人種的攻撃が完全な犯罪行為として規定されているのも事実です。

その後は、世界のどこかで紛争が起こるたびに、難民の受け入れを行ってきたわけですが、この難民の受け入れと一般的な移民制度は分けて考えなければいけません。人道主義から受け入れる移民(難民)と、オーストラリアの経済的・地政学的政策から受け入れる移民(技術移民)との明確な移民制度区分が確立したのは1990年代に入ってからです。

移民制度に伴う人口の推移

戦後600万人の人口でスタートしたのですが、1980年には1500万人に、1995年に1800万人に、2015年現在、とうとう2400万人に達そうとしています。「日本に比べればまだまだ少ないし、土地も広いのだから」と思うかもしれませんが、第一次産業以外、これと言った軸になる産業もなく、国土の80%が、砂漠とはいかないまでも乾ききった土地で、見た目ほどキャパシティが無いのです。1990年代「オーストラリアの適正人口は2000万人」と考える人が多かったのですが、既に400万人オーバー。実際のところ、都市部では2010年代に入って、住宅問題が深刻になっています。

メルボルン等は典型的なケースで、「世界で最も住みやすい都市」と喧伝されるようになったため、人口の流入が止まらず、都市部も東西北に広がっていく一報。住宅地の供給と、不動産価格の安定化に州政府は躍起になっていますが、人口増加に伴うインフラ問題・不動産価格の高騰が市民の悩みの種となっています(2016年現在)。新規の住宅地が広がるのは

浮かび上がる移民制度の問題

このまま無制限に移民を受け入れてもいいのか?と言う疑問が浮かび上がるのは当然のこと。これが意外と、昔からオーストラリアに住む白系オーストラリア人よりも、戦後移民してきた地中海系やアジア系にそう考える人が多いのです。理由としては、地中海系やアジア系は移住後、必死に働き多額の税金を納め、オーストラリアの国政に報いてきたが、近年の難民や移住者は、ソーシャルセキュリティーを食い物にしている連中のほうが多い!と言う不満があるのでしょう。

かといって、オーストラリア政府もいきなり移民制度を放棄するわけにも行かない。やんわりとドアを閉めつつ、経済的に本当に有益な人間を受け入れる・・この数年、移住ビザ申請規定が厳しくなっている背景です。通常移住のみならず、難民受け入れプログラムも当然ながら厳しさを増しています。国内批判がありながらも、原則難民をほぼ無条件で受け入れてきたオーストラリアですが、2015年度からは方針を転換し、難民受けれプログラムも厳しい方向に舵を切りました。

1990年代には、明確に不足している技術分野が明確でした。例えばIT系の技術者であったり、エンジニア分野の人材、医療関係従事者など、オーストラリア全土で不足していたのです。2000年を過ぎた頃から、どの分野も比較的国内での人材供給が充実し始め、以前ほどの人材供給不足は解消される方向に進んでいます。毎年の当にSOLとCSOLが見直されるのはそういう理由からです。移民局は、各産業団体と話し合い、人材の不足具合と照らし合わせながらSOLに掲載するスキルを決めます。人材供給過剰状態になれば、そのスキルはリストから外され、不足気味となればリストに復活します。

オーストラリア移民希望者が、そういった移民制度の変更に伴い、右往左往させられるのには、こう言ったデイバイデイで変化するオーストラリアの経済事情・産業事情に基づくもので、仕方が無いことなのです。

移民制度のこれから

オーストラリアは、アメリカの様な二大政党制ではなく、複数の政党がありますが、基本的にはリベラル(自由党)とレイバー(労働党)の二大政党が、順繰りに政権交代を繰り返しているようなものです。過去30年ほどは「リベラル(自由党)が政権を取ると移民制度・移民政策は厳しくなり、レイバー(労働党)が政権を取ると移民制度・移民政策は緩くなる」の繰り返しでした。2013年以降はリベラルが政権を握っているので、政策は厳しくなる方向で進んでいます

では次にレイバー(労働党)が政権を取れば、移民制度は緩くなるか?と言うと、そうとも言えない事情になりつつあります。

移民局ニュースでも触れていますが、今年度(2015/2016年度)、確実に技術独立移住者の受け入れは鈍化しています。申請許可(インビテーション)の発給数が減少しているのです。特に、一部のスキルに関しては、はっきりとハードルが上がり、来年度にはSOLから消える可能性が高いでしょう。経済が失速するリスクが高まる中、それもいたし方が無いわけで、受け皿となる経済が縮小するのが判っているのに、技術移民を無造作に受け入れるわけにも行きません。

そこで問題になうのが、現行の移民制度のありかたです。現行のままでは、国際的な建前と、国内的な政策に矛盾が生じてしまう。そこで、根本的な制度改正が行われる可能性が高まるわけです。

この数年、投資系移民の受け入れ口を次第に拡大してきました。まあ「お金持ってきて」と言うのが本音です。現在、技術系移住者には「持参金」の規定は特にありません。極端な話「無一文でも受け入れてくれる」のですが・・・・これからは「有る程度の持参金」なんて話も出てくるかもしれません。実際、この1年で、投資家ビザが大幅に改正され、大金持ち専用の色々なビザサブクラスが生まれてきています。

年金と逆移民問題

先に触れた地中海系移民達・・・2016年現在70〜80歳代の爺様・婆様になっておりますが、最近では、一年の半分以上を祖国スペインやイタリア、ギリシャに帰って過ごすお年寄りが増えてきています。中には逆移住をしてしまうお年寄りも多くいます。(日本と違って、彼らは二重国籍が認められているので、未だに祖国の市民権・国籍も保有しているので、出入国が自由と言う訳です)何が問題かと言うと、オーストラリアで貰った年金(ペンション・スーパーアニュエーション)を、海外で使うのでオーストラリア国内ではお金を落とさない。それに、50年前に安価で買った不動産を高値で売り、その金で祖国に不動産を買い逆移住してしまう。

オーストラリアでも日本同様、年金の問題はあります。オーストラリアの問題点の違うところは、老人の不法受給(グレーゾーンも含めて)が多すぎる点です。オーストラリアには、政府が支給する年金(ペンション)と、資金運用会社が支給する積み立て型年金(スーパーアニュエーション)がありますが、積み立て型年金支給額の多い老人、大きな資産を保有する老人には政府が支給する年金(ペンション)がカットされる、もしくは支払われないはずなのですが・・・かなり多くの受給者が、資産やスーパーアニュエーションを隠したり、ごまかしたりして年金の不法受給を行っています。数年前には、夫婦で20年間に渡りAU$500,000-以上の年金不法受給を受けていた裕福な老夫婦が発覚し、ニュースになっていました。

逆移民組みは、豪州国内の資産を実質ゼロにし、住所だけは息子や娘と同じにしてフルで年金受給を受けます。本人は、オーストラリア国内で売却した家のお金を持って、祖国で悠々自適の生活と言うわけです。彼らは40〜50年前移住後、2〜3万ドル前後で家を購入しています。それも街の中心地から30分圏内。そしてそれらの物件は現在3〜4ミリオンの価値に成っており(100倍以上)、売却すれば子供達に半分渡しても、手元に1.5ミリオン程度(日本円で一億円以上)は残ります。これを持って祖国に戻り、なおかつオーストラリアの銀行口座には毎月年金が振り込まれると言う訳です。しかし法律上の問題は全く無いのが現実。

スペイン系知人の父親は、まさにこの典型的なパターン。数年前に奥さんを亡くし、資産を整理したうえでスペインマドリードに戻り、今は年に一度オーストラリアの子供達を訪れる生活を送っているのですが・・・「長年税金払ってきたのだから、年金受け取るのはあたりまえ」との事。オーストラリア政府としても、解決の糸口が見出せない現状に苦しんでします。

中国人の経済パワーとオーストラリアへの中国移民

オーストラリアへの中国人移民の歴史は古く、1850年代のゴールドラッシュ期に始まります。今もビクトリア州のゴールドラッシュの中心地だったBendigoやBallaratなどの田舎町に行くと、何故か中国系のおばあちゃんがパン屋をやっていたりする。話すと、完全なネイティブオージー。もう何世代も住み続けているとか・・・オーストラリアでは、どんな田舎町にでも中国系が数家族住んでいます。こう言ったABC(Australian Born Chineseの略)は別に、この数年(4~5年)でそれはそれは凄い数の中国人が押し寄せてきています。それも、そこそこお金持ちの中国人が・・・・例えば、メルボルンのMLCと言うお嬢様学校(年間学費が2万ドルを優に超える)ですが、数年前までアジア系といえば各学年に数人もいなかったのに、今や学年の25%が中国系に。PLCにいたっては60%中国系(残りは30%インド系10%が白人)と言う始末。男子校もしかり、典型的なアッパー男子校Scoth College(年間学費が3万ドル以上)も、十年前にはほとんど居なかった中国系が、今や25%を占めるに至っています。

こういった動きは、物価上昇の一因を生していて、オーストラリアの物価は過去10年間、平均年率4.5%の割合で上がり続けています。中国の富裕層から見れば、アメリカ・カナダへの移住が理想なのかもしれませんが、アメリカのグリーンカードを取得するのは難しく、カナダの移民制度もこの数年厳しくなった今、オーストラリアが移住先として最有力オプションになってきている訳です。オーストラリア政府も富裕層移民の受け入れには積極的で、この2年間で新規の投資型ビザ(豪州の州債を購入する条件で移住ビザが発給される)を立ち上げており、2015年度上半期の投資型ビザ申請者400人の内90%が中国人(日本人は僅かに4名)。富裕層中国人の移住が、オーストラリア経済の安定に寄与しているのは確かですが、同時に物価上昇を招いているのが実情です。

税金と移民

オーストラリアは日本に比べると税金が高いです。消費税は10%、タバコ税は70%、所得税は・・・例えば50歳年収800万円ならうち220万円を税金で持って行かれる計算になります。オーストラリア人がよく口にするブラックジョークに「今年は、ソマリア難民一家族ぶん税金払ったよ」と言うのがあります「ソマリ」の部分は、時代によって変わりますが、要するに政府が難民家族に一年間で支給する金額が2万ドル強で、これは収入8万ドルの労働者が支払う税金に相当します。「俺が払った税金全額で、政府はソマリア難民一家族を養っている」と言う不満交じりの、難民受け入れ制度批判でも有るわけです。まあ「今年は、無職の麻薬中毒2人分の税金払ったよ」と言うのもあり、特別難民受け入れだけを攻撃している言葉ではありません。

仲の良いベトナム人夫婦(共に薬剤師)がいますが、こんな会話をしていました。
夫「今年は夫婦合わせて税金が5万ドル越えたよ。もう税金の事考えるだけで胃が痛むね」
妻「仕方が無いでしょ。私達も、その税金で大学卒業まで面倒見てもらったのだから」
夫「・・・・。それにしても税率が・・・・」
彼らは1970年代にボートピープルとして、無一文でオーストラリアに渡ってきた難民です。家族揃って、生活が自立できるまで政府に養われていた(税金に養われていた)のであり、今のソマリア難民と同じ立場だったのです。・・・が、彼らの危惧するのは、勤勉なアジア人と同じように、アフリカ系難民も、将来の税収を担っていけるか?・・・と言う点です。これは一見、人種偏見にも見えるかもしれません。・・・(続く)・・・

 

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